補助金について最初に知っておくべきことが一つあるとすれば、これです。

補助金は後払いです。

採択されても、交付決定を受けても、その時点ではお金は入りません。設備を買うお金も、工事の代金も、まず事業者が自分で支払います。補助金が振り込まれるのは、事業を終えて報告し、検査を通ってからです。

この順序を知らないまま「採択されれば資金が入る」と考えて動くと、資金繰りが破綻します。実際、相談として持ち込まれる困りごとの中でも、この誤解に起因するものは少なくありません。

実際の順序

制度によって細部は違いますが、おおむね次の順に進みます。

1. 公募 — 公募要領が出る
2. 申請 — 事業計画書などを提出する
3. 採択 — 審査を経て採択が発表される
4. 交付申請 — 採択後に、あらためて経費の内訳等を出す
5. 交付決定 — ここで初めて補助対象が正式に確定する
6. 発注・契約・支払ここから発注してよい。支出は事業者の負担
7. 事業の完了
8. 実績報告 — 何に、いくら使ったかを証拠付きで報告する
9. 確定検査 — 交付元が内容を確認し、補助額を確定する
10. 請求 — 確定した額を請求する
11. 入金 — ようやく振り込まれる

採択(3)から入金(11)までの距離を見てください。採択は入金の約束ではなく、入口に立ったという意味しかありません。 各段階で何が決まるかは公募から入金まで、補助金の手続はどう進むのかに整理しました。

採択と交付決定は別のもの

見落とされやすいのが、3と5が別だという点です。

採択は「この事業計画は補助の対象としてよい」という判断です。交付決定は「この経費に、この額を補助する」という決定です。採択された後に交付申請を出し、経費の内容を精査され、認められないものが削られることもあります。

そして、発注してよいのは交付決定の後です。採択の通知を見て動き出してしまうと、その支出は補助対象外になります。急ぐ気持ちは分かりますが、ここは待つほかありません。

入金までにどれくらいかかるか

制度と公募回によって幅がありますが、公募の締切から入金まで、1年以上かかることは珍しくありません。年度をまたぐ事業であればさらに延びます。

その間、次の資金は事業者が用意しておく必要があります。

- 設備や工事の代金の全額(補助金は経費の一部しか出ません)
- 補助対象にならない経費(消費税、汎用品、既存設備の更新分など)
- 事業を回すための運転資金

補助率が3分の2の制度であっても、いったんは全額を立て替えることになります。しかも補助金が出るのは経費の一部なので、残りは最後まで自己負担です。

立て替えをどう手当てするか

現実的な選択肢は3つです。

自己資金。 もっとも確実ですが、手元資金を大きく削ることになります。補助金が入るまでの数か月から1年、その分の資金が寝ます。

つなぎ融資。 補助金の交付決定を裏付けとして、入金までの期間を融資でつなぐ方法です。金融機関によっては補助金専用の商品を用意しています。交付決定通知書の写しを求められるので、決定後に相談することになります。事業計画の段階で金融機関に話を通しておくと、動きが早くなります。

概算払い。 制度によっては、事業の完了前に補助金の一部または全部を先に受け取れる仕組みがあります。資金繰りの上では助かりますが、注意も要ります。

概算払いには裏側がある

概算払いを受けた後に事業が完了できなくなると、受け取った額の返還を求められます。

実際に、概算払いで受け取った約3億7千万円を工事請負会社にその日のうちに支払い、工事が2〜3割で頓挫した結果、全額の返還と年10.95パーセントの延滞金を命じられた裁判例があります。事業者に工事遅延の帰責事由はなく、受け取った金も手元に残っていませんでしたが、返還義務は消えませんでした。

詳しくは補助金の返還請求は、自分に落ち度がなくても止まらないに書きました。概算払いを検討するなら、事業が完了できなかった場合に何が起きるかを先に確認しておくことをおすすめします。

探すときに見ておくべきこと

制度を探す段階で、次の3つを確認しておくと後が楽になります。

- 補助率と上限額 — 自己負担がいくらになるかを先に計算する
- 事業実施期間 — いつまでに完了しなければならないか
- 概算払いの可否 — 資金繰りの選択肢が増えるか

本サイトの制度ページでは、上限額・補助率・締切を最初に表示しています。金額は公式の公募要領が正ですが、候補を絞る段階の目安としてお使いください。